Restoring

江戸の雅をいまに甦らせる

多色摺木版画という手法の浮世絵は、絵師が描き上げた版下絵(主版)を下に、彫師が複数に重ねて奥行のある美しい表現を作るための版木を作り、摺師によって和紙の表面でなく、繊維の奥にまで色素を摺りこませることにより、透明感のある鮮やかな錦絵が完成します。そして、すべて人の手作業によって生まれた作品のため、同じ浮世絵でも、所蔵する版画によって非常に微細な違いや味わいがあるのも、浮世絵の面白さです。

国際アートプロジェクトの取り組みとして、日本で一番歴史のある東京国立博物館の原典、所蔵作品らしさを研究しました。江戸時代に刷られた現存する作品は、経年による和紙のくすみや退色なども生じます。世紀を超えて、江戸の雅をいまに甦らせるため、東京国立博物館の監修の下、貴重な所蔵作品の徹底した解析と補正を行い、作品が生まれた当時の色彩、風合い、細やかな描写や質感といったディテールも妥協なく、いまは亡き天才絵師が作品に投じた魂や情熱、彫師や摺師が精魂を込めた思いまでをも再現するように取り組みました。

鼠よけの猫

経年による和紙の茶変を踏まえ、版画が生まれた当時の色彩や猫の毛の細やかな描写とふわふわした風合いを復元。国芳が描いた愛らしい表情をより際立たせるため、背景をブラックにリモデル。

両国橋大川ばた

色のかすれや退色が見られる部分を補正し、川面のせせらぎを感じる広重ブルーをあざやかに。ぼかしや摺り筋など版画の細やかなディテールも大事にした上で、なめらかな美しさを。

神奈川沖浪裏

経年による和紙のくすみやシミと波のしぶきを表現したスポットを慎重に選り分けていくことからはじめ、退色を補正し、北斎の描いた壮大なパノラマの躍動感と力強さがもたらす感動を。